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 愛知大学 図書館情報学 加藤ゼミです。

私たち3年生は、共同研究をし、その結果をポスターにまとめ、毎年秋に横浜で行われる図書館総合展に「ポスターセッション」として出展しています。

今回は、ネット上で見れられるようにしてほしいという声を多数いただきましたので、こうして上げさせていただくことにしました。

〈書店のポップ戦略〉


1.書店インタビュー

~精文館~

・自分の担当の売り場を持っている店員さんが多いので、担当分野のポップを作ることが主

(例:児童書・絵本担当者はそのジャンルのポップを作る。)

・出版社も手書きのポップの重要性をわかっており、今は出版社が手書き風に作ったものを使うことが多い。パソコンで A4に引き伸ばし、パネルにして壁に貼る、また、別で飾りを作ってポップにつけるなどの工夫をしている。

・チェーン店であるため、本部で作られたポップが各店舗に配られることもある。

・それぞれの店員の手作りにも、文字や絵が苦手な人がいたり、忙しくて時間がなかったりしてパソコンでフリー素材を使用して作ることも多い。しかし、ポップを書くことが上手な人の手書きが一番良いと思っている。

・一つの本に複数のポップを付けることはあるのか?→メディアで紹介された、芸能人が宣伝した等で売れ行きが良いときは付け替えることがある。

・北海道にポップを全くつけないことがポリシーの書店がある。そこでは、デザイン性の高い表紙や帯で十分宣伝になる、後付のポップはかえって余計であるとの考え。

~豊川堂~

① 本を読んだ上で(商品知識を持った上で)ポップを書いていますか?

→読まなければならないということではないが、読んだ上で書いた方が良い。しかし、本当に読んだのかわからないポップを書く人も多い。読み込むことで、「この本は人前では読まない。」=「おもしろすぎて笑ってしまうので、人前では読まないでください。」という意味など工夫がたくさんできる。しかし、読み込んでかくのは時間がないため実際は難しい。話題性、売れているとされるポップになってしまいがち。「売れています」「人気です」「テレビで紹介されました」など。また、出版社が作ったポップだけで終わらせてしまうこともある。 ②ポップを書く担当は決まっているのか、本一冊のポップに対し、ポップは一人で書くのか、それとも複数で書いているのですか?

→決まっていない。皆が書けるようになればいいと思うが、実際はあまり進んでいない。東京にある柳正堂(りゅうせいどう)にはかつてポップを書く専門の人がいたことも。

② ポップを重要視していますか?

→しているが、忙しいと二の次になりがち。

③ ポップを書く際、マニュアルなど教えられてから書いているのか、それとも個々で書いていますか?

→個人のセンスに任せ、思うままに書かせている。しかし、ポップの書き方の講座を設け、店員の教育を行ったりしている。

④ ポップを書く本は決まっていますか?それとも書店員個人の好きな本で書いていますか?

→好きな本を書いてもらうこともあれば、売らなければならない本について書くこともある。

一概には言えない。

⑤ ポップはどのくらいの頻度で変えていますか?また、同じ本に対してポップを何個か作ることはありますか?

→ずっと残っているポップもあるが、更新した方が良いと思う。あまり時間がないため、同じ本に対してのポップは何個も作ることはできない。

⑦どんなジャンルにポップをつくることはあるのか?

→どんなジャンルでもポップは作れるから作る。売れるのではないかな、面白いかなと思う本ならポップを作るし、つける。

⑧ポップを作る本の対象は、何か基準はありますか?

→基準はない。

⑨一番売れた本のポップは何ですか?

→ポップによって売れた実体験を教えて下さった。 ⑴ 林さんがカルミア店で勤務していた時の話。菅野美穂のヌード写真集が販売されて世間で

話題になっていた時、挫折したところから大女優にまでなるキッカケになった菅野美穂の生き方、考え方がアインシュタインの名言と似ているところがあったため、「菅野美穂の人生を変えた本」とポップを書いて「アインシュタイン 150 の言葉」という本を販売したところ、売れた。

⑵ 昔、絶対音感にまつわる本が流行っていたころ、音楽教育の仕方に問題があると考え、

「絶対音感は存在しない」という内容のポップを書き、音楽教育についての本を売ったところ売れた。名古屋の音大の先生も買っていかれて、感謝された。「良い本紹介してくれてありがとう」と言ってもらえた。

⑩ポップによって売上があがったのはありますか?

→売れる。売れるからポップをかく。ポップによって爆発的に売れるようにもなるから。

⑪ポップを作る上で、対象となる年齢層は決めていますか?

→決めている。本自体にターゲットが決まっているため、ポップもターゲットを決めて書いている。

女の人を対象にするポップを書くことが多い。女性対象のポップは、男性がポップを書くときにも、女性の字っぽくすることを意識して書く。

⑪の2 決めているとしたら、年齢層の違いによってどんな工夫をしていますか?

→女性対象の場合は、いかにも女性が書いたような字で書いている。丁寧で繊細な感じに。

⑫ポップの文章の工夫で具体的な例を教えてください。

→「人前では読まないで下さい」、「平日には読まないでください」など。(裏を返せばそれだけ面白いという意味合い)

お客さんは“売れている本”を買うため、売れている感じを出すようなポップを書く工夫をしている。また、あとがきを読んで買う人もいるため、あとがきも含めて宣伝している。 ⑬ポップをつくるときは、手書きで作りますか?

→手書き風に書くように意識している。お客さんに伝わりやすい。でも、何が何でも、手書きの方がよいというわけでもなく、手書きばかりはやっている時に、印刷したポップを出すと、目を引くなど、お客さんの目を引く商法を取り入れている。

~その他伺ったお話~

・豊橋の朝日タイムズで、月に 2 冊本を紹介している。新聞を読む人が買ってくれそうな本の紹介をかく。ダイエットの本を読みこんでかくこともある。・・・好きな本だけじゃない。

・「世界の中心で愛を叫ぶ」が最初の頃のポップによるヒット。恋愛物が好きな千葉県南部の書店のパートさんがおすすめとしてポップを書いたことがきっかけで、あんまり売れなかった本が 200 万部売れた。

・名古屋のグローバルゲートでの例。

ゲート内に木などの緑豊かな部分があったため、「パッと見緑に見える風景」になるよう、本の表紙が緑の本を集めて陳列して販売するなど工夫。緑は平和の色であるため、そのようなコンセプトで行ったという。本を選ぶところから戦略。

・日本ど真ん中大賞による取り組み。湊かなえが無名なときから、双葉社が推していったことから有名となった。

・11 月 1 日が今年から本の日に制定されたため、賛同する出版社・書店はイベントなど、何かしらのアクションがあるかもしれない。

本の日などを作ることによって、今の「本が売れなくなっている」時代に、いかに少しでも売れるようにするかを考えていかないといけない。